3週前のコラムで掘り下げた「スタート」。前回はそのスペシャリスト・雨谷一樹(33=栃木・96期)が考えるコツや、どのような選手がスタートを得意とするのかを紹介した。今回は現輪界で〝最もスタートが速い〟と評される選手を紹介する。
雨谷に〝スタートでかなわない選手はいますか〟と聞くと「福永君です」と即答だった。福永大智(25=大阪・113期)。6日時点で直近4カ月21走中、スタンディング(S)数はなんと「18」を記録している。前を取ることで、道中無駄な脚を使わず、強烈な捲りを連発。今期3Vと結果につなげている。福永に雨谷からの評価を伝えると「ナショナルチームの方には勝てないと思う。でも、速くて悪いことはないし、持ち味だと思っている」と照れながら胸を張った。
そんな福永のスタートのコツは?「体の使い方もあるけど、発走員の手を見ている。ピストル(号砲)を撃つと光るんですよ。それを見ている。光ると同時にもうロックが外れているんです」と秘密を教えてくれた。音速よりも光速の方が速い。〝パン〟という音ではなく、ピストルの光に超反応することで、ライバルを圧倒しているのだ。
スタートでどれくらい脚を使うか、どんな選手が速いかということに関しては雨谷と考えは一緒。「2、3歩で相手に諦めさせれば脚の消耗はない」、「小柄で体重が軽く俊敏性がある選手が速い」である。ただ、「これは書いてください、荒井(崇博)さんは速いです。負けそうになって焦りました」。島田竜二ら、大柄でも速い選手は少数だがいる。
「よく他の選手にスタートについて聞かれる」と福永は言う。スピード競輪になり選手間でスタートの価値が高まっているなら、ファンも車券戦術として軽視できない。予想する上でスタートの速さも考慮し、号砲がなる瞬間から注目してほしい。
◇渡辺 雄人(わたなべ・ゆうと)1995年(平7)6月10日生まれ、東京都出身の28歳。法大卒。18年4月入社、20年1月からレース部・競輪担当。昨年は中央競馬との二刀流に挑戦。今年から再び競輪一本に。愛犬の名前は「ジャン」。